慶應義塾大学経済学部 英語の傾向と対策|過去7年分を分析してわかったこと
こんにちは、ふたがみです。
慶應の経済を目指している人から、この2つをよく聞かれます。「足切りが怖い」「大問Ⅳが何を聞かれているのかわからない」。
どちらももっともです。慶應経済の英語には、他の私大にない仕組みが2つあります。先に採点される部分があること。そして、日本語の文章と英語の文章を突き合わせて解く大問があること。
この記事では、7年分を分解したうえで、その2つにどう備えるかを書きます。記事の最後に、この分析をもとにした予想問題の第1問を置きました。登録は要りません。その場で解けます。
結論
慶應経済の英語は、1冊が2つのテーマで編まれた公共政策のディベート試験です。
大問Ⅰと大問Ⅱは同じテーマの賛成論と反対論。大問Ⅲは別テーマで、大問Ⅳはその大問Ⅲに対する日本語の論評。最後の自由英作文Ⅴは、AとBがそれぞれのテーマに対応します。
この構造を知らずに1問ずつ解こうとすると、いちばん取りやすい問題を落とします。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験時間 | 100分1 |
| 配点(英語) | 200点(A方式・B方式とも420点満点)2 |
| 設問別の配点 | 大学非公表 |
| 大問構成 | 5題。Ⅰ・Ⅱが同一テーマの賛否ペア/Ⅲが別テーマ/Ⅳが日本語の論評と英語4択/Ⅴが自由英作文 |
| 解答形式 | Ⅰ〜Ⅲはマークシート(解答用紙A)。Ⅳは4択ですが、記述用紙(解答用紙B)に番号を書きます。Ⅴだけが記述 |
| 合格最低点 | A方式 241点/420点(57.4%)・B方式 276点/420点(65.7%)3 |
| 足切り | あり。Ⅰ〜Ⅲが先に採点される1 |
英語200点は420点満点の48%です。A方式は英語200・数学150・小論文70、B方式は英語200・地歴150・小論文70で、数学と地歴が入れ替わる形。どちらで受けても英語だけで半分近くを占めます。慶應経済は英語で決まる、と言われるのはこの配点です。
足切りの仕組み|対策の順番はここで決まります
問題冊子に明記されている事実があります。Ⅰ〜Ⅲが先に採点され、その得点が一定の水準に達した人だけ、ⅣとⅤが採点されます。A方式で受ける人は、数学の一部も加味されます。
つまりⅠ〜Ⅲが足切り、Ⅳ・Ⅴが上積みです。
これが意味することは1つです。ⅣとⅤをどれだけ磨いても、Ⅰ〜Ⅲが基準に届かなければ読まれもしません。
自由英作文の添削に時間をかけたくなる気持ちはわかります。でも順番は逆です。まずマーク32〜33問を安定させてください。話はそれからです。
足切りの基準点そのものは、大学が公表していません。毎年の受験者の出来で動く性質のものでもあります。だから確実に言えることは1つだけです。Ⅰ〜Ⅲのマークを落とさないことが、ⅣとⅤを読んでもらう条件になります。
大問別の特徴
Ⅰ・Ⅱは「賛否ペア」として読みます
Ⅰが賛成論、Ⅱが同じテーマの反対論。この形は7年とも変わりません。
そして両論統合の設問が毎年2〜3問出ます。ⅠとⅡを読み比べないと答えられない問題です。
だから読み方が決まります。Ⅰを読んだら、どの論点に賛成したのかをメモしてください。Ⅱを読むときは、同じ論点にどう反対しているかを突き合わせます。このメモがあれば両論統合は取れます。1本ずつ独立した長文として処理すると、ここを落とします。
なお「筆者の賛否」を直接問う設問は、2023年度以降ゼロになりました。賛否そのものを聞くのをやめて、両論統合のほうへ寄せた形です。
設問の6割は空所補充です
先に母数を決めておきます。Ⅰ〜Ⅲのマークは、現行の形になった2023年度以降の4年で32問・33問・33問・33問です。この記事で「マーク」と言うときは、この数を指します。
そのうえで、型ごとの内訳を見てください。
| 年度 | 空所補充 | 語群・文補充 | 両論統合 | その他 | 型を判別できた数 / マークの実数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 18 | 6 | 2 | 4 | 30 / 32 |
| 2024 | 19 | 6 | 2 | 6 | 33 / 33 |
| 2025 | 20 | 6 | 2 | 3 | 31 / 33 |
| 2026 | 24 | 6 | 2 | 1 | 33 / 33 |
内訳は設問文の書き方から機械で分類したもので、年によって2〜3問は型を決め切れずに落ちています。だから右端の2つの数がずれる年があります。比率の傾向を見るための表として読んでください。
空所補充が6割前後を占めます。ここが主戦場です。語群・文補充は現行の4年とも6問で固定されています。
そして空所補充には癖があります。根拠が空所の直前だけにあるとは限りません。段落をまたいで、次の段落の1文目が空所の中身を言い直していることがあります。記事の最後に置いた予想問題で、その形を1問体験できます。
文は長くありません。語彙で殴ってきます
7年21本を測った結果です。
| 指標 | 平均 | 振れ幅 |
|---|---|---|
| 1文の平均の長さ | 19.3語 | 16.5〜21.8 |
| 30語以上の文 | 1本あたり5.9本 | 2〜10 |
| 単語集に載っていないレベルの語 | 1長文あたり 40語前後 | 21〜78 |
1文19.3語は、難関大の中では軽いほうです。構文で崩れる試験ではありません。
効いてくるのは語彙です。単語集に載っていないレベルの語が1長文につき40語前後、しかも注が付きません。
40語を1つずつ止まって考えていたら、2,400語は絶対に終わりません。知らない語に印だけ付けて飛ばす練習が、この試験では構文解析より優先されます。
分量は7年でほとんど動いていません
| 年度 | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | 3本合計 |
|---|---|---|---|---|
| 2020 | 768 | 790 | 924 | 2,482 |
| 2021 | 718 | 751 | 902 | 2,371 |
| 2022 | 746 | 757 | 855 | 2,358 |
| 2023 | 652 | 766 | 905 | 2,323 |
| 2024 | 768 | 840 | 830 | 2,438 |
| 2025 | 711 | 848 | 1,037 | 2,596 |
| 2026 | 764 | 695 | 892 | 2,351 |
7年の平均は、3本合わせて2,417語です。大問別ではⅠが約732語、Ⅱが約778語、Ⅲが約906語。Ⅲがいちばん長いのは7年とも共通です。
7年で2,323語から2,596語。振れ幅は273語しかありません。
分量が安定しているということは、過去問で作った時間感覚がそのまま本番で使えるということです。古い年度から解いても問題ありません。ここは早稲田商と正反対です。
大問Ⅳは「英語の問題」ではありません
2023年度から入った形式です。大問Ⅲの英文に対する日本語の論評・投書(670〜840字)を読ませ、英語の4択に答えさせます。
聞き方は4つの型に固定されています。
- 論評者が英文筆者の主張として誤って帰属させているのはどれか
- 英文筆者は論じているが、論評者が触れていないのはどれか
- 英文筆者が支持し、論評者が反対している考えはどれか(またはその逆)
- 論評中の日本語の語句の意味に最も近い英語はどれか
全部が「誰が何を言ったか」の管理を問う設問です。英語の読解力を測っているのではありません。
だから準備はⅢを読む段階から始まります。Ⅲを読みながら、主張を話者ごとに分けてメモします。この癖があるかどうかで、Ⅳの4問がまるごと変わります。
この形式を扱っている対策記事はほとんどありません。差がつく枠です。
Ⅴの要求は年々きつくなっています
設問文は7年とも「日本政府は〜すべきか。そしてなぜそう考えるか」を問う型で固定です。個人の体験談を書かせる問題は7年で1つもありません。
語数指定は冊子に書かれていません。解答例の実測は132語から216語、中央値でおよそ200語でした。
そして注意点の要求が増え続けています。
| 年度 | 要求されること |
|---|---|
| 2020〜2022 | 箇条書き不可/反対意見への言及と反論/Ⅰ〜Ⅲから最低1つ引用(引用例の掲示あり) |
| 2023 | 引用元がⅠ〜Ⅳに拡大 |
| 2024 | 引用例の掲示が消える/自分の言葉でまとめる/著者名・出版年を入れる |
| 2025 | 丸写しではなく言い換え、参照箇所に著者名と出版年 |
| 2026 | 具体例を挙げながら論じるが追加 |
現行の要件は事実上、「反論」「言い換え引用+著者名と出版年」「具体例」の3点セットです。ここを外すと、内容がよくても要件不足になります。
テーマは7年とも公共政策です
| 年度 | Ⅰ・Ⅱ(賛否ペア) | Ⅲ |
|---|---|---|
| 2020 | 芸術への公的助成 | 漁業補助金 |
| 2021 | 顔認証技術 | 自動運転車 |
| 2022 | ミニマリズム | ファッション廃棄 |
| 2023 | 出産奨励金 | 介護労働者 |
| 2024 | リモートワーク | メディアリテラシーと偽情報 |
| 2025 | ダム建設 | 地熱発電 |
| 2026 | フードバンク | 食品ロス・食品廃棄 |
14テーマが例外なく「政府が介入すべきか」に落ちます。純粋な科学解説も、歴史も、文学も、7年で1本もありません。
そして環境・資源が最多で、直近2年は4テーマすべてが環境・資源でした。日本語でいいので、環境政策の論点は押さえておいてください。
100分をどう配るか
Ⅰ〜Ⅲで平均2,417語、Ⅳの日本語670〜840字、Ⅴの英作文200語前後。
| 大問 | 内容 | 目安の時間 |
|---|---|---|
| Ⅰ・Ⅱ | 賛否ペアの長文(約1,510語) | 35分 |
| Ⅲ | 別テーマの長文(約906語) | 20分 |
| Ⅳ | 日本語の論評+英語4択 | 15分 |
| Ⅴ | 自由英作文(200語前後) | 25分 |
| 見直し | 5分 |
Ⅴに25分を先に確保してください。足切りを通ったあとに読まれるのがⅤなので、時間切れで書けないと上積みがゼロになります。
対策の順序
第1段階:語彙を積む(高3春から夏)
ここが最優先です。単語集に載っていない語が1長文40語前後、注なしという設計である以上、語彙を積まずに読み切ることはできません。難関私大レベルの語彙集を1冊、確実に。
覚え方に自信がなければ、英単語の覚え方を先に読んでみてください。
到達基準: 1冊を9割。そのうえで、知らない語に印を付けて飛ばす練習を過去問で。
第2段階:ⅠとⅡを賛否ペアとして読む練習(高3夏)
Ⅰを読んで論点をメモし、Ⅱで突き合わせます。両論統合2問はこのメモで取れます。
到達基準: ⅠとⅡを読み終えた時点で、両者の対立点を3つ挙げられること。
第3段階:Ⅲを読みながら話者ごとに仕分ける(高3秋)
Ⅳの準備はここから始まります。誰の主張かを分けて記録する癖をつけてください。
到達基準: Ⅲの本文から、筆者の主張と引用された他者の見解を分けて書き出せること。
第4段階:Ⅴを3点セットの型に落とす(高3秋以降)
反論・言い換え引用(著者名と出版年つき)・具体例。200語前後でこの3つを入れる型を先に決めてしまうのが速いです。毎回ゼロから構成を考えていると25分では書けません。
到達基準: 200語を25分で、3点すべて入れて書けること。
第5段階:環境政策の論点を日本語で仕込む
直近2年は4テーマすべてが環境・資源でした。新書1冊で足ります。
過去問を解いたあとの復習のやり方は、過去問分析のやり方にまとめました。
併願校に、この対策はどこまで流用できるか
早稲田大学商学部と比べる
| 慶應経済 | 早稲田商 | |
|---|---|---|
| 本文の総語数(直近) | 2,351語 | 4,341語 |
| 語彙の支え | 注なし・単語集外の語が1長文40語前後 | 注あり |
| 自由英作文 | 毎年1問・200語前後 | なし |
| 日英2文書の突き合わせ | 毎年(大問Ⅳ) | なし |
読む量は早稲田商のほうが多いです。慶應経済で足りるつもりでいると、早稲田商の4,341語で崩れます。
逆に、慶應経済のⅣとⅤは早稲田商に存在しません。早稲田商の対策時間からは切り離してください。
一橋大学と比べる
どちらも自由英作文が毎年出ますが、中身が別物です。
| 慶應経済 | 一橋 | |
|---|---|---|
| お題 | 7年とも政策論(日本政府はどうすべきか) | 描写が6年中3回。3つの課題から1つ選ぶ |
| 語数 | 200語前後 | 70〜100語(2026年度) |
| 要求 | 反論・出典明記つき引用・具体例 | 課題により異なる |
一橋の英作文対策では、慶應経済に届きません。引用に著者名と出版年を付ける、という要求は一橋にはないものです。
一方で読む量は一橋のほうが少なく(1,500語前後)、慶應経済の演習をしていれば一橋の分量は軽く感じます。ただし一橋は本文中の語の8割が1回しか出ないので、語彙の推測が効きません。分量が少ないことと、易しいことは違います。
予想問題を1問、ここで解いてみてください
この分析をもとに、慶應経済の形式とテーマはそのままに、英文の難しさだけを落とした予想問題を作りました。いまの本番レベルでは手が出ない、という人のための入り口です。
その第1問を、ここに置きます。登録は要りません。この記事の中で解けて、解説まで読めます。
大問Ⅰ 第①段落・第②段落
Free Tuition: An Investment, Not a Gift (Ed U. Kate, 2024)
[第①段落] Every spring, thousands of Japanese students open a letter, and it tells them they have passed. A second letter follows, and it tells them the price of the first one. For many families, the second letter is the harder one to read. Several countries have now made a decision about this second letter, and it is this: the letter should not ( 1 ).
[第②段落] Money should not decide who studies. In Germany, in Norway and in Finland, public universities ask their students for no tuition at all, and the state pays the bill instead. The argument behind that choice is not a soft one. A country that teaches its young people without first asking them to borrow is not handing out a gift; it is buying something it badly needs.
問1 第①段落の空所( 1 )に入れるのに、最も適切なものを1つ選んでください。
- arrive so late
- be so difficult to read
- decide who studies
- mention money at all
考えてから、下を読んでください。
解答と解説
正解は 3 です。
根拠は、空所の直後にあります。第②段落の1文目が、こう始まります。
Money should not decide who studies.
空所に入るのは「その手紙が、誰が学ぶかを決めてはならない」。次の段落の1文目が、空所の中身をそのまま言い直しています。
誤答の切り方も見ておいてください。
| 選択肢 | なぜ切れるか |
|---|---|
| 1 arrive so late | 到着の遅さは話題に出ていません |
| 2 be so difficult to read | 読みにくさは第①段の比喩で、決断の中身ではありません |
| 4 mention money at all | 金額に触れるな、という主張はどこにもありません |
ここで確かめてほしいのは、空所補充の根拠が「空所の前」だけにあるとは限らないことです。
慶應経済のマークは6割前後が空所補充です。そして本番では、根拠が段落をまたいで置かれます。空所の直前だけを見て選ぶ癖がついていると、この形式で落とします。
残りの問題について
この予想問題は、本番と同じ構成で作ってあります。大問Ⅰ・Ⅱが同じテーマの賛成論と反対論、大問Ⅲが別テーマ、大問Ⅳがその論考への日本語の投書、大問Ⅴが自由英作文。マークは本番と同じ33問です。
本文の長さと1文の長さ、語彙のレベルだけを落としてあります。形式と設問の作り方は本番のままです。
全問と解説の配布については、準備が整い次第このページでお知らせします。
次に読むなら、この1本
慶應経済と一橋は、どちらも自由英作文が毎年出ます。ただしお題の性格がまったく違います。国立を併願するなら、夏までに両方の型を知っておいてください。
この記事は2026年度入試までの出題を分析しています。最終更新: 2026年9月
出典
- 試験時間100分・足切り(第一段階選抜)の出典。慶應・早稲田専門「【足切り突破】慶應義塾大学経済学部 英語の傾向と対策」https://keio-waseda.jp/keio-keizai-english/ ↩
- 配点(A方式・B方式とも英語200点/420点満点)。旺文社 大学受験パスナビ「慶應義塾大学 経済学部 一般選抜 入試科目」https://passnavi.obunsha.co.jp/univ/2370/subject/?facultyID=010 ↩
- 合格最低点(2026年度・大学独自の換算による点数)。旺文社 大学受験パスナビ「慶應義塾大学 経済学部 合格最低点」https://passnavi.obunsha.co.jp/univ/2370/border/?facultyID=010 ↩

