「将来から逆算しろ」の罠|高校生が知らないB2Bと情報戦
こんにちは、ふたがみです。
「将来から逆算しろ」の罠|高校生が知らないB2Bと情報戦
「将来やりたいことから逆算して、大学を選びなさい」。進路指導の定番フレーズですよね。
実は僕自身も、少し前までよく口にしていました。でも大学入試の指導を10年続けてきて、考えが変わったんです。
やりたい仕事からの逆算は、高校生の知識では難しいと思うようになりました。
この記事では、その理由をお話しします。B2Bという「見えない世界」と、受験が情報戦であること。そして、逆算できないなりに進路を決める考え方についても書きますね。
このサイトの背骨は「今の勉強が将来のどこに繋がるか」です。この記事は、その中でも「進路の決め方」の話になります。
なぜ「やりたいことからの逆算」は高校生に難しいのか
逆算は、ゴールが見えているときに使える技です。マラソンのペース配分が計算できるのは、42.195kmという距離が先に決まっているからですよね。
ところが進路のゴール、つまり「将来やりたい仕事」は、そもそも見えていない人がほとんどです。
そして見えていない理由は、本人の努力不足ではありません。知っている職業のサンプルが、構造的に偏っているからなんです。
高校生が触れる職業は「B2C」ばかり。世の中の多くはB2B
高校生が日常的に触れる職業を思い浮かべてみてください。学校の先生、塾の先生、カフェの店員さん、料理人、医者、美容師。
どれも「B to C」、Business to Customer、顧客に直接関わる仕事です。イメージしやすい職業は、だいたいこれなんですよね。
一方で、世の中の仕事の多くは「B to B」、Business to Business、企業に対してモノやサービスを提供する仕事です。企業向けのシステムをつくる、部品を納める、物流を設計する。生活を根っこで支えているのに、高校生の目にはほとんど表面化しません。
最近はメルカリのような個人間取引(C to C)の業態も出てきていますが、いずれにせよ、見たことのない仕事を目標には置けません。
だから「やりたい仕事から逆算しろ」と言われた高校生は、知っている数少ないB2C職業の中から無理やり選ぶことになります。これが逆算の罠です。
さらに言えば、いまある仕事の中身も時代とともに変わっていきます。高校時代に固定したゴールが、働き始める頃には別物になっていることも珍しくありません。
受験は情報戦。「平等」だけど「公平」ではない
僕は、受験の成功をシンプルに「行きたいところに行くこと」だと定義しています。じゃあ、行きたいところはどうやって見つけるのか。
これが難しいから、学歴・偏差値・イメージだけで大学を選ぶ生徒が続出します。全員が東大に行けば幸せになれるかといえば、そんなことはないですよね。
行きたい場所を見つけるために絶対に必要なのが、情報です。受験は学力だけの勝負ではありません。情報戦です。
情報弱者という言葉があるように、知らないことが多いと損をする仕組みになっています。試験のルールは全員同じで、その意味で受験は平等です。でも、情報は均等には巡ってきません。
総合型選抜という入り口を高1で知っていた人と、高3の夏に知った人。大学と専門学校の中間にあたる「専門職大学」という第3の選択肢を知っている人と、存在すら知らない人。同じ学力でも、持っている情報の量で選べる進路の数が変わります。「平等だが、公平ではない」。これが受験の実像だと思っています。
そして、情報を持たないまま流されると、言い方は悪いですが、受験ビジネスのカモになってしまいます。偏差値表だけを見せられて「ここなら行ける」で決めた進路に、きみの意思はありません。
「何になるか」ではなく「どうなりたいか」で決める
逆算できないなら、進路はどう決めるのか。僕の答えは、職業(何になるか)ではなく、在り方(どうなりたいか・どう在りたいか)で方向を決めることです。
- 人の挑戦を支える側にいたい
- 仕組みをつくる側に回りたい
- 言葉や文化をまたいで働きたい
これなら、いま知っている職業のリストに縛られずに言葉にできます。
実際、社会人になってから「これをやりたい」と明確に決めて、そのままやりきる人は多くありません。「こんなことをやってみたい」で動き出して、手と頭を動かしながら中身が固まっていく。そちらのほうが現実的なんですよね。
だから高校生の進路も、完成した設計図ではなく「走り出せる方向性」があれば十分だと僕は思っています。
方向性が決まったら、単一の職業に照準を合わせるのではなく、世の中がどう変わっても効く専門性や大局観を身につけられる環境を選びましょう。大学がその環境として社会とどう繋がっているかは、大学と社会の接続の記事で書きました。
まとめ
- やりたい仕事からの逆算は、高校生の知識では構造的に難しい。触れる職業はB2Cばかりで、世の中の多くはB2Bだから
- 受験は情報戦。ルールは平等でも、情報は公平には巡ってこない
- 学歴・偏差値・イメージだけの大学選びは、受験ビジネスのカモになる第一歩
- 「何になるか」ではなく「どうなりたいか・どう在りたいか」で方向性を決める
- 必要なのは完璧な設計図ではなく、走り出せる方向性
「どうなりたいか」を自分の言葉にする作業は、一人でやるとけっこう難しいです。やりたいことがまだ見つからない人は、まずここから読んでみてください。

