なぜ日本人は勉強しても英語を話せないのか|元・話せない英語教師がTESOLで知った理由
こんにちは、ふたがみです。
中学・高校で何年も英語を勉強してきたのに、いざ外国人を前にすると一言も出てこない。「自分には才能がないのかな」と思っている人、けっこう多いと思います。
実は僕自身が、英語を教える仕事をしながら、ずっと話せない側にいた人間でした。
先に結論を言ってしまうと、日本人が英語を話せないのは、才能のせいでも勉強不足のせいでもありません。「話すための脳を使う練習を、そもそもしてこなかったから」です。
この記事では、かつて「英語を話せない英語教師」だった僕が、カナダでTESOL(英語教授法の国際資格)を学んでたどり着いた「話せない」の正体をお話しします。原因がわかると、やるべきことは驚くほどシンプルになります。
日本人が英語を話せない理由は「才能」ではない
まず前提として、英語を話す力は生まれつきのセンスで決まるものではありません。
第二言語習得(SLA:人が母語以外の言語を身につけるプロセスを研究する分野)の考え方に立てば、話す力は「話す練習をした分だけ」伸びる技能です。
逆に言えば、どれだけ長く勉強しても、「話す」という行為そのものを練習していなければ話せるようにはなりません。当たり前のことなのに、日本の英語学習ではこの当たり前が抜け落ちやすいんですよね。
なぜそう言い切れるのか。僕自身が、その生き証人だったからです。
僕は「英語を話せない英語教師」だった
僕は新卒で予備校に就職して、英語講師として小中学生を週に約24クラス担当していました。
求められていたのは「英語の成績を上げること」。だから、とにかく成績を上げることに焦点を当てて授業をしていました。
クラスによってはたくさん宿題を出しましたし、授業中に怒号を上げて叱りつけたこともあります。「考えさせる」よりも「教え込む」こと、そして「徹底させる」ことに注力していました。
結果、伸びた子もいれば、脱落してしまった子もいました。未熟だったなと思います。
そんなある日、ふと原点に立ち返る機会がありました。
僕が英語にのめり込んだきっかけは、中学生のとき英語の先生が話してくれた海外の話に惹かれて、「英語を話せること」に強い憧れを抱いたことでした。その先に広がる世界に触れてみたい。あの高揚感を、未来の生徒たちにも経験させてあげたかったはずなんです。
なのに当時の僕は、英語を話せません。海外で勉強したこともありません。文法は教えられるのに、話せないんです。
英語を話せない、海外に行ったこともない、でも勉強だけはできるから英語を教えている。それでいいのか? と本気で悩みました(笑)。
だから新卒の6月、この1年で学べるものを学んだら会社を辞めて留学する、と決意しました。目的は、TESOLを通して第二言語習得の理論と、英語学習者へのネイティブのアプローチ、そして自分自身が「話せるようになる過程」を体験することです。
つまりこの記事は、「勉強はできるのに話せなかった人間」が、話せるようになる側に回った経験から書いています。
第二言語習得の視点で見る「話せない」の正体
TESOLで理論を学んで、実際に自分が話せるようになってみて、日本人が話せない理由は2つに整理できると思っています。
理由1:学校英語は「インプット」に極端に偏っている
英語の4技能のうち、reading(読む)とlistening(聞く)はインプット、writing(書く)とspeaking(話す)はアウトプットです。
日本の英語教育は、受験の都合もあって圧倒的にインプット側に偏っています。読解と文法知識は世界的に見てもかなり鍛えられるのに、発信する練習はほとんどありません。
このインプットとアウトプットでは、明らかに使う頭が違います。詳しくは4技能の"頭の使い分け"で解説していますが、ここで押さえてほしいのは一点だけです。アウトプットの練習をしていない、そもそも教わってもいないなら、話せるようになるわけがない、ということですね。
理由2:「知識を取り出して発信する回路」を使ってこなかった
知識が頭に入っていることと、それを瞬時に取り出して口から出せることは、別の能力です。
日本人の多くは知識の在庫が十分にあるのに、取り出す回路を一度も鍛えていません。だから「勉強したのに話せない」という、一見矛盾した状態が生まれるんですよね。
メキシコ人の友人と韓国人の友人|留学先で見た決定的な違い
留学中、この構造を象徴する光景を何度も見ました。
友達のメキシコ人やブラジル人は、正直、文法はめちゃくちゃでした。でも学校でコミュニケーション重視の教育を受けてきたので、知識から発信への流れがとにかくスムーズで、どんどん話すんです。
一方、韓国人の友達は文法もきれいで語彙力もあるのに、話すスムーズさでは彼らに劣っていました。
もちろん人によりますし、どちらが良い悪いという話でもありません。
ただ、日本の教育システムは文化的に近い韓国と同じく、基礎をきちんと叩き込むタイプです。だから日本人は、練習さえすれば「きれいな」英語を話せる素地を持っています。問題は知識ではなく、スピードなんです。発信の回路だけが未開通なんですよね。
これは見方を変えれば朗報だと思っています。インプットの貯金はすでにあるので、あとはアウトプットの練習を始めるだけです。
「話せなくて当たり前」と受け入れたら、スタートライン
だから、こう受け入れてほしいと思っています。
「何年英語を勉強してきたけど、話せないのは当たり前。だってこれまでは、話すのとは違う頭(脳)を使ってきたんだから」
これは開き直りではなくて、英語をコミュニケーションのツールとして使えるようになるために一番大事なマインドです。
原因が「才能」なら打つ手はありませんが、原因が「練習の種類」なら、今日から変えられます。あとはトライアンドエラーで発信し続けるだけでいいと思っています。
具体的に何をすればいいかは、中学英文法だけで会話は成立するで紹介しています。独学で「使える英語」に届くまでの全体像は英語カテゴリのトップにまとめているので、あわせて読んでみてください。僕の経歴の詳細はプロフィールに書いています。
まとめ:日本人が英語を話せない理由
- 話せないのは才能や勉強不足のせいではなく、話す脳を使う練習をしてこなかったから
- 日本の英語教育はインプット(読む・聞く)に偏り、アウトプット(書く・話す)の練習がほぼない
- 知識の在庫と、知識を瞬時に取り出して発信する回路は別物
- 日本人は「きれいな英語」を話せる素地をすでに持っている。足りないのはスピードだけ
- 「話せなくて当たり前」と受け入れて、アウトプットの練習を今日から始めればいい
この勉強は、将来どこに繋がるか
「知識をため込む力」と「知識を取り出して使う力」を分けて考える視点は、英語に限らず、社会に出てからのあらゆる学びの土台になります。

